TrueNASの構築

作成日:2025/09/29
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最近、メーカ製NASの置き換えでTrueNASを構築しました。在庫部品を流用することで安価に高性能なNASを構築することができました。


既存のNASとバックアップ体制

学生時代からNASはNETGEAR製品を利用していました。2013年にReadyNAS NV+v2(1.6GHz CPU、256MB RAM)を購入し、寮に置いて使っていました。しかしながらアクセス速度が遅いため、当時所属していた映像部に寄贈してしまいました。2014年にはRN104を購入し、2019年まで使っておりました。2019年にはRN104を実家に移設してバックアップとし、新規にRN214を導入しました。RN214からRN104へは拠点間VPNを経由して毎日Rsyncによりデータバックアップを行っており、たとえ片方の拠点で火災が発生しても大丈夫という体制としていました。しかしながら、実家のRN104が2025年夏に突然応答なしとなり、この対応を検討する必要に迫られました。

まず考えられたのは実家に行きNASを再起動することです。おそらくこの方法で復旧できるとは思いますが、何と言っても2014年の製品ですからまたいつハングアップや故障するか分かりません。次に考えたのは新たなNASを新規購入して実家に設置することです。しかし、近年の円安の影響で4ベイのNASは安くても6万円以上となっていました。RN214は2.5万円で購入できていたことから、6万円も出して同等の製品を買うというのは納得感がありません。最後に思いついたのは、余り物のPCを使ってTrueNASを構築することです。ちょうど録画サーバを移行したため、富士通のPRIMERGY TX1310 m1というサーバが余っていました。これならHDDさえ入れれば出費なしにNASを構築することができるため、この方法で本拠点用NASを構築し、RN214は実家に移設することとしました。


TrueNASの構築

ここでTrueNASのハードウェアとして使う富士通 PRIMERGY TX1310 M1について紹介します。
CPUIntel Pentium G3420 3.2GHz
RAM16GB(在庫品で増設 non-ECC)
SATAポート6
NICオンボード 1Gbps ×2
増設 玄人志向GBE2.5-PCIE
ここに、Windowsからアクセスできるsmbファイル共有フォルダを作ることを目標とします。

ハードウェアとOSインストール

このサーバは2018年にNTT-X storeで購入したものですが、約2万円と非常に安価で鼻毛鯖の再来と言われていました。購入してから2025年春まではテレビ録画用サーバとして使用していましたが、さすがにUbuntu16のままでは突然動かなくなりそうということで、別の録画サーバに移行しておりました。しばらく在庫品として電源を切って放置しておりましたが、今回NASにするためにメンテナンスをしました。
・6年分のホコリの清掃
・CMOS電池の点検(電圧3V以上あったので交換はせず)
・メモリを工場出荷時の4GBから在庫品の16GBに交換
・玄人志向 2.5ギガビットLANカードの取り付け
・システムディスクの取り付け(60GB SATA SSD)
・HDDをRN104から移設
これから構築されるという方は、ハードオフやメルカリで中古のサーバを買うというのもおすすめです。その場合、メモリはできるだけ多いものを買ったほうがよいでしょう。最低でも8GB、できれば16GBがいいです。ECCメモリが推奨されていますが、non-ECCでも動作はします。
HDDについては、RN104から取り出してパーティションを全て削除し、そのまま取り付けました。

OSはTrueNAS公式サイトよりTrueNAS-SCALE-25.04.2.isoをダウンロードし、適当なUSBメモリにイメージを書き込みました。書き込みソフトはRufusを使いました。最初、ISOイメージモードで書き込みましたがUSBブートに失敗し、DDイメージモードで書き込むとうまくブートしました。起動ディスクを作るならDDモード一択のようです。

ここからはUSBブートのよもやま話です。2010年頃はまだUSBブートは一般的ではなく、フロッピーやCD/DVDといったメディアから起動させるのが一般的でした。私も2010年頃にKNOPPIXというLinuxディストリビューションをCDに焼いて使っていました。2010年代中盤になるとUSBブートができると謳うM/Bも増えてきましたが、自分が試した時はことごとく失敗し、結局DVDにisoを焼いてブートするのが一番確実という状況でした。さすがに最近ではUSBブートは当たり前にできるようになっていますが、今でもUSBメモリの相性によりブート失敗するという話をたまに聞きます。

話を元に戻し、TrueNASのセットアップに行きます。基本的には他のLinuxと同様に対話型ウィザードでOKやYESを選択していれば自動的にインストールが完了します。途中でパスワードの設定を求められますが、このパスワードはWEB UIに初めてログインする時にも使います。また、玄人志向 GBE2.5-PCIEは何もしなくても自動で認識されます。セットアップを始める前にLANケーブルを繋いでおくと、セットアップ中に自動でDHCPの設定が入りますので便利です。黒い画面に1)~10)のメニューが表示されるようになったら、ここからはWEB UIから設定できます。

WEB UIからの設定

セットアップしたTrueNASに到達できるPCのWEBブラウザに、https://truenas.local/と打ち込めば管理画面にアクセスできるはずです。初期ユーザ名はtruenas_admin、パスワードはセットアップ時に設定したものになっています。最初は英語ですが、Systemタブ>General Settings>Localizationと進むことで、言語を日本語に変えられます。ついでにタイムゾーンもAsia/Tokyoとしておくとよいでしょう。

デフォルトでは「truenas_admin」ユーザが作成されていますが、Windowsのログインユーザと同じユーザを用意しておくと、smbファイル共有でアクセスする際に特別なログイン操作が不要で便利です。以下では、一般ユーザ「main」を作成する際の画面を示します。

フルネーム任意の英文字
ユーザ名任意の英文字・数字
パスワード任意の英文字・数字・記号
UIDデフォルト値


ストレージの設定

ZFSファイルシステムの概要

TrueNASはZFSファイルシステムを採用しており、「プール」「データセット」といった独特の用語が出てくるため、初心者は面食らうかもしれません。以下に簡単な説明を示します。

仮想デバイス(vdev)
プールを構成する中間レイヤー、物理デバイスを集合させてミラーやRAIDなどを組める
ストレージプール(zpool)
1以上の仮想デバイスで構成する、最上位のストレージ集合体
データは動的にストライプ化されて仮想デバイスに書き込まれていくので、性能と容量が確保される
仮想デバイスは随時入れ替えることができる
データセット(dataset)
プール内に作成できる論理的なファイルシステム又はボリューム
実際にユーザのデータが保存されるのはこの中になる

プールの作成

というわけで、共有フォルダを作るには、まずストレージプールを作らなければなりません。プールの作成は、ストレージメニューを開き、右上の「プールの作成」ボタンから始めます。
「1 General info」では、プールの名前を決めます。通常のNAS用途であればプールは一つあれば十分なので、単に「Pool」としておけばよいでしょう。

続いて、「2 Data」画面では、RAID方式などを選択できます。ストレージが3台以上あるなら、RAIDZ1としておくといいでしょう。Disk sizeは取り付けたHDD・SSDのうち最小のサイズにします。Widthは取り付けたHDD・SSDの本数を指定します。

設定画面3~7については、全てオプション画面ですので、通常は全部Nextボタンを押すだけでよいです。「8 Review」は、今まで設定した内容の最終確認となります。よければ「プールの作成」ボタンを押すと、プール作成が完了します。

データセットの作成

続いて、データセットの作成に入ります。データセットメニューにて、先ほど作成したPoolが表示されていますので、これを選択して右上の「データセットを追加」ボタンを押します。データセット追加画面では、名前が設定できますので任意の名前を付けます。これがsmbファイル共有時に見えるフォルダ名にもなります。また、Dataset Presetは「SMB」としておきます。

初期状態ではSMBサービスが自動起動しない設定になっているので、自動起動にするか聞かれます。「Enable this service to start automatically.」にチェックを入れてから、「スタートボタン」を押します。

アクセス許可の編集

上記までの操作で、SMB共有フォルダが作成されました。ただ、アクセス許可がrootのみとなっているので、Windowsからアクセスするには不便です。そこで、Windowsで使用しているユーザがアクセスできるようにアクセス許可を編集します。データセットメニューを開き、目的のフォルダを選択した状態で、アクセス許可パネルの「編集」ボタンを押します。すると、「ACL Editor」という画面になりますので、以下の通り設定します。

Owner任意のユーザ
Owner Group任意のグループ

ここまでの設定で、WindowsからTrueNASの共有フォルダにアクセスできるようになります。エクスプローラのアドレスバーに「\\truenas」と入れれば、共有フォルダが見えるはずです。


TrueNASの実力

TrueNASはZFSファイルシステムを採用しているため、RAIDを組んでおけば非常に高速にアクセスできます。また、RAMやSSDへのキャッシュも効くようで、私の環境ではHDD単体速度を大きく超えるアクセス速度が出ました。以下に、10G LANで接続した場合のベンチマークを示します。



まとめ

以上のように、TrueNASは圧倒的なポテンシャルを有しており、市販ハイエンドNAS製品に負けないパフォーマンスを発揮します。また、余ったデスクトップPC一式があるなら、比較的安価にNASを構築できます。一方で、構築や運用にはLinuxやファイルシステム等の知識が要求され、敷居が高いのも事実です。TrueNASを採用するかどうかは、最終的には個人の技量や好みにより決定すべきでしょう。