AliExpressには様々な(怪しい)PoEインジェクターが販売されています。これらの製品は本当にPoE機器で使えるのか、検証してみました。
PoEとは、LANケーブルを使ってIPカメラや無線AP等に電源を供給する規格のことです。代表的な規格を以下に示します。一般的にはIEEE802.3afに対応していることがほとんどです。
規格名 | 通称 | 供給側 | 受電側 | 対応ケーブル |
---|---|---|---|---|
IEEE802.3af | PoE | 44~57V 15.4W | 37~57V 12.95W | Cat3以上 |
IEEE802.3at | PoE+ | 50-57V 30W | 42.5-57V 25.5W | Cat5以上 |
IEEE802.3bt | PoE++ | 50-60V 60W | 最大60V 51W | Cat5以上 |
PoE給電側の機器をPSE(Power Sourcing Equipment)、受電側をPD(Powered Device)と言います。PSEとしては、PoE対応のスイッチングハブや、通常のハブとPD機器の間に割り込ませるPoEインジェクターなどがあります。
規格に適合したPSEとPDは、LANケーブル接続直後にネゴシエーションを行い、電力クラスの識別等を行います。このため、af規格のPSEにbt規格のPDを接続しても、PSEが過負荷で焼損したりといったことはありません。また、PSEにPoE非対応の機器が接続されても、給電されることはありません。ただし、後述するように中華PoE機器は「パッシブPoE」と称して、ネゴシエーションを行わず給電しっぱなし・受電しっぱなしという製品がほとんどです。
PoEは、通常のLANケーブルを利用して送電を行います。具体的には、LANの1-2番線に+・3-6番線に-を供給するAlt.A規格と、4-5番線に+・7-8番線に-を供給するAlt.B方式があります。PD側はどちらの方式でも正常に受電できるよう作られています。また、クロスケーブルを使うと極性が反転してしまうため、PDの入力段にはダイオードブリッジが設けられています。
AliExpressで売られている様々なPoEインジェクターのうち、代表として2機種を購入してみました。PDにはYamaha WLX202無線アクセスポイント(IEEE802.3af)を使用します。
入力 | AC100-240V 50-60Hz 0.6A |
出力 | DC48V 0.5A |
端子配列 | Alt.B結線 |
通信速度 | 1Gbps |
入力 | DC5-48V 1A |
出力 | DC5-48V 1A |
端子配列 | 不明 |
通信速度 | 1Gbps |
中華PoEインジェクターは、結果として普通に使えることが分かりました。しかし、通常のPSEにあるような保護機能(過電流遮断等)は皆無であると予想され、安全面ではまったくおすすめできません。また、リンク速度も100Mとかなり低速となってしまうため、通信速度が要求される無線APのような用途ではあまり使えないでしょう。
なお、本HPに記載の内容は全くの無保証です。機器の故障や火災など、いかなる結果(直接的・間接的問わず)が生じても著者は全く責任を負いません。