中華PoEインジェクターの試用

作成日:2025/08/05
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AliExpressには様々な(怪しい)PoEインジェクターが販売されています。これらの製品は本当にPoE機器で使えるのか、検証してみました。


PoE(Power over Ethernet)の概要

PoEとは、LANケーブルを使ってIPカメラや無線AP等に電源を供給する規格のことです。代表的な規格を以下に示します。一般的にはIEEE802.3afに対応していることがほとんどです。
規格名通称供給側受電側対応ケーブル
IEEE802.3afPoE44~57V 15.4W37~57V 12.95WCat3以上
IEEE802.3atPoE+50-57V 30W42.5-57V 25.5WCat5以上
IEEE802.3btPoE++50-60V 60W最大60V 51WCat5以上

PoE給電側の機器をPSE(Power Sourcing Equipment)、受電側をPD(Powered Device)と言います。PSEとしては、PoE対応のスイッチングハブや、通常のハブとPD機器の間に割り込ませるPoEインジェクターなどがあります。

規格に適合したPSEとPDは、LANケーブル接続直後にネゴシエーションを行い、電力クラスの識別等を行います。このため、af規格のPSEにbt規格のPDを接続しても、PSEが過負荷で焼損したりといったことはありません。また、PSEにPoE非対応の機器が接続されても、給電されることはありません。ただし、後述するように中華PoE機器は「パッシブPoE」と称して、ネゴシエーションを行わず給電しっぱなし・受電しっぱなしという製品がほとんどです。

PoEは、通常のLANケーブルを利用して送電を行います。具体的には、LANの1-2番線に+・3-6番線に-を供給するAlt.A規格と、4-5番線に+・7-8番線に-を供給するAlt.B方式があります。PD側はどちらの方式でも正常に受電できるよう作られています。また、クロスケーブルを使うと極性が反転してしまうため、PDの入力段にはダイオードブリッジが設けられています。


中華PoEインジェクター試用

AliExpressで売られている様々なPoEインジェクターのうち、代表として2機種を購入してみました。PDにはYamaha WLX202無線アクセスポイント(IEEE802.3af)を使用します。

LZD201-24W-48V

ACアダプタ一体型のPoEインジェクターです。カタログスペックは以下の通り。
入力AC100-240V 50-60Hz 0.6A
出力DC48V 0.5A
端子配列Alt.B結線
通信速度1Gbps
販売リンク

早速接続してみたところ、無線APはあっさりと動作しました。ただし、通信速度は100Mbpsとなります。1Gbps対応というのは中華製品特有の誇大広告表示ですね。また、アダプタには当然ながらPSEマークは無いので、信頼性は全く不明です。

POE Injector PowerSplitter(型式不明)

PoEインジェクター、スプリッター兼用の装置です。電源入出力は外径5.5mm、内径2.1mmのDCジャックになっています。カタログスペックは以下の通り。
入力DC5-48V 1A
出力DC5-48V 1A
端子配列不明
通信速度1Gbps
販売リンク

DCジャックに48Vを供給した状態で、無線APを接続すると動作しました。ただし、こちらもリンク速度は100Mbpsとなります。中華製品のスペック表記は全く当てになりません。


まとめ

中華PoEインジェクターは、結果として普通に使えることが分かりました。しかし、通常のPSEにあるような保護機能(過電流遮断等)は皆無であると予想され、安全面ではまったくおすすめできません。また、リンク速度も100Mとかなり低速となってしまうため、通信速度が要求される無線APのような用途ではあまり使えないでしょう。

なお、本HPに記載の内容は全くの無保証です。機器の故障や火災など、いかなる結果(直接的・間接的問わず)が生じても著者は全く責任を負いません。